2005年12月2日
犬と暮らすということ - 「雨はコーラがのめない」/「つめたいよるに」 江國香織
「コウカイニッシ。」さんで紹介されていて興味をもったので、江國香織さんの「雨はコーラがのめない」を読んだ。
「雨」は彼女の愛犬の名前。
なぜかぼくは、今までずっとこの人気作家の愛犬はゴールデン・リトリバーだと思っていたのだが、アメリカン・コッカスパニエルの勘違いだったようだ。
正直言って、ぼくはこの小説家の文章が苦手である。どうも妙な違和感を感じてしまうのだ。
女性に人気があるという理由は、とてもよくわかる気がするのだけれど。
たぶん、ぼくが男性で、なおかつオジサンだからなのだろう。
ともあれ、著者の愛犬と愛する音楽について記したこのエッセイ集は、しみじみとイイ。
ぼくもこういう風に犬と暮らしていきたいなあ。
腹心の友、として。
雨と私のいる部屋に、音楽が流れている。雨には雨の意志や感情があり、私には私の意志や感情がある。でも、私と雨はそれを言葉で伝えあうことはできない。一緒にいても、実は全然別の世界を生きているのかもしれない、と思うことがある。
この部屋も、散歩やごはんといったきまりごとも、お天気も、電話の音も、雨にとってと私にとってとでは全然別の世界を構成しているのではないか。おもしろいなと思うのは、もしそうでも、二つの別々の世界に、同じ音楽が流れていることだ。
私は言葉に依存しがちなので、言葉に露ほども依存していない雨との生活は驚きにみちている。驚きと、畏敬の念に。
こういう文章に触れると、ああこの人は本当に犬と暮らしているのだなあ、と切ない気持ちになります。
ついでと言ってはナンだが、数多い犬が登場する江國作品の中でも、名作と評判の「デューク」収録の「つめたいよるに」も読了。
「デューク」はドッグラバーズのための、おとぎばなし。
犬を愛している、あるいはかつて愛した人ならきっとわかる、その経験のない人にはたぶん正確には理解できない、その感じ。
まあ、傑作でしょうね。
たぶん。きっと。
あなたも胸がいっぱいになります。
犬と暮らすという、その愛おしさと切なさに。
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コメント
江國香織さんは随分前に娘がなおちゃんから借りてきた本で知りました。「こうばしい日々」だったかな。詩のような文体ですよね。だから、女性には受けるはずね。
以前 彼女の写真が雑誌に掲載されていて、とても雰囲気のある方で特に長い髪が素敵でした。
「ホリーガーデン」の彼女のあとがき、印象に残っています。
「余分な時間ほど美しい時間はない」
投稿者 kaiママ : 2005年12月4日 14:32
こんばんは〜。
「デューク」は季節的にもタイムリーですね。
私も江國香織さんはあまり読まないけれど、
「つめたいよるに」だけは持ってます。
男性受けはあまりしない作家さん…なのかなぁ。
私は個人的に山本文緒さんと狗飼恭子さんが好きです。
お進めなので是非〜★
でも、こちらも男性向けではないかもしれない…
投稿者 ぱふまま : 2005年12月5日 00:51
kaiママさん
江國香織さんとナオコーラさんの組み合わせ、ちょっと意外かも。そういえば昨日の朝日新聞の連載で「焚き火に対するオトコの情熱は怖い」みたいなことを書いていて笑っちゃいました。
「余分な時間ほど美しい時間はない」っていいですね。
「無駄遣いほど美しい金の使い方はない」みたいな感じで。ちょっと違うか......
ぱふままさん
「デューク」はすごく巧妙な短編だと思いました。
なんだかんだ言って何冊か読んでするし、実はけっこう好きなのかも。
もっとも、38歳の中年男性が「江國香織さんのファンです」っていうのもどうかとは思いますけど。
山本文緒さんは何かの賞を取った本を読んだような....
狗飼恭子さんは名前だけは聞いたことがありますが、どんなタイプの方なんでしょ。
今度読んでみたいと思います。
投稿者 かえる : 2005年12月5日 02:02