2005年2月22日

ホリエモン大暴れ、に思う

新種の怪獣ホリエモンが連日大暴れである。

どうにもピントがずれている感が否めないメディアの非難や賞賛の中で、個人的に毎回更新を楽しみにしている江川昭子ジャーナル記事は、いつもながら実に的確にこの騒動の本質を示唆してくれた。
(江川昭子さんは本当に理性的で責任感に満ち、チャーミングな女性だと思う。ホームページ内雑記帳のエッセイには音楽への愛が溢れていて読んでいて嬉しくなる)

「新聞とかテレビを、我々(インターメットという新しいメディアあるいはシステムのことだと思う/かえる注)は殺していくんですけど、自分たちが(新聞やテレビを)持ちながら殺していった方が、効率がいいかなと思って」
「(新聞・テレビなどの既存メディアが)殺されるのは間違いない。どうやって延命しようかってことばっかり考えているんですよ」

江川女史のインタビューの中で語られたというホリエモンの上記の発言は実に明快で(ある意味紛れもない真実で)あるし、今回の騒動におけるメディアや当事者であるフジテレビの過剰な拒絶反応はこのホリエモンの真意に対する本能的な防衛反応であると考えれば理解がたやすい。

しかし、実際には世の中はそれほどシンプルには出来ていないし、ホリエモンもそれを理解した上で行動しているようである。
今日のJ-WAVE「JAM THE WORLD」に件のホリエモンが出演していたが、番組内での発言からもその様子が窺えた。
江川女史の論調とは異なり番組内のホリエモンの主張は、「基本的に(規模自体は巨大だが)ニッチを対象とするインターネットのビジネスにはマスである既存有力メディアからのユーザーの誘導が不可欠であるし、既存のメディアではカバーしきれない情報の発信はインターネットと融合することにより可能となる、結果それを望む(既存メディアの)ユーザーのニーズを満たすことが出来る、したがって両者にとってメリットがあるはずである」といったようなものであったと思う。
つまりホリエモン氏は、次代の情報メディア覇者となるインターネットの本質(巨大なニッチ情報、あるいは独立した個人メディアの巨大な集合体)とその抵抗勢力である(それ自身が)マスである既存有力メディアのそれぞれの性格と強みまた弱点も当然のことながら的確に理解した上での買収劇であったということなのであろう。単にノウハウを吸収した上で殺すためでなく、ということである。

個人的な感想として、「巨大メディアがデジタル放送などのくだらない(それが目指しているインタラクティブあるいはオンデマンド性の実現は既存のアナログメディアとインターネット技術で充分すぎるほどカバー出来る)新システムに行った巨額の設備投資を、もしもインターネットに行ってくれていればソフトバンクの孫さんが巨額の赤字を出しながらブロードバンドの普及に奔走する必要などなかったのに....」という番組中で行っていた彼の発言は実に当を得ているように思えた。
同時にホリエモンの大暴れとそれに対する世間の反応には、正論を堂々と主張する者は往々にして人を傷つけるし人から嫌われる、という典型を見ている気にもなる。

インターネットは自己責任を前提としたメディアである。
その中には玉石混淆あらゆる情報が溢れており、それを規制することは事実上困難である。
しかし情報の選択権はユーザーにあるので、(理論上)既存メディアのように情報が操作されたり偏向することはない。
自由であり、平等であり、真に民主的である。
だからこのメディアは既存のメディアをやがて殺すことになるし、そのほうがどう考えても(大衆にとって)望ましいはずでしょ?
ホリエモンの主張とはたぶんそういうことなんでしょう。
筋が通ってるし、個人的に共感できる部分も多い。

でも、我々大衆は実際には権威的なメディアが大好きだし、自分で情報の選択やその良否・是非の判断をするよりただ与えられ受け入れることの方が楽だと知っている。
自分の頭でわざわざ難しいことなんて考えたくないもんね。

だから、仮にホリエモンがこの戦いに勝利し、思ったよりも早く既存メディアの時代が終焉を迎えることになったとしても、そのバトンを受けたインターネットは結局のところ表面的な形がちょっと変わっただけの新しい巨大メディアになってしまうのではないだろうか?
というか、本来は独立した極小の情報発信者を仲介するハブであるべき(あるいは、にしか過ぎない)インターネットメディア業者に、既存の有力メディア同様の権威としての情報発信とそれに対する責任が求められる結果になるのではないだろうか?
つまり(彼が嫌悪していたはずの)「権威」の移譲が行われただけという結果に。。。

まあ、ホリエモン的にはそれでも別にかまわないんでしょうけどね。
楽しいお買い物は十分に堪能できたのだから...........

投稿者 かえる : 23:33 | つぶやき

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コメント

おはようございます。
ほぼ全てのマスメディアがホリエモン=悪(加害者)、フジテレビ=善(被害者)の図式の上で『私達は皆さんの(視聴者)意見を代弁してます。』と言う態度がいやです。『公共性』を語るなら公平であれ。でも無理でしょ。

ホリエモンが嫌われるのは、いかにも『オタク』にみえるからかな・・?

投稿者 りば・ごほ母 : 2005年2月23日 11:15

ホリエモンが嫌われるのは、「正直」だからじゃないですかね。裸の王様(余談ですが、最初間違えて穂高の王様って打っちゃった...)に出てくる少年タイプ(既存のメディアが裸だという意味では全くないです)。
しかもおバカではなく、とびきり頭がいいのに正直。
それでいて精神的にオトナではなくコドモっぽい(顔はトッチャンボーヤぽいけど)。そこが楽天の社長とホリエモンの違いではないでしょうか。

上げて下げてが既存メディアの基本的な手法ですから(そうしないと盛り上がらないですからね)、たまたま現在はホリエモン&eq;悪だけど、流動的なんじゃないでしょうか。
当のホリエモンも(もちろんメディア側も)その点は重々承知の上みたいですね。昨日のラジオでホリエモンもそう言ってました。
その辺の仕組みはプロ野球参入騒動の時などの経験で、しっかり学習したみたいですね。
さすが東大卒ともなると頭がいいですねー!

投稿者 かえる : 2005年2月23日 22:15

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