2005年4月9日
半島を出よ
村上龍著「半島を出よ」読了。
村上龍が最後の1ページまで緊張感を失わずに書き上げた作品は、例外なく凄い。
「コインロッカー・ベイビーズ」、「五分後の世界」、そしてコレ、などなど。
2010年、日本の経済は破綻し街にはホームレスが溢れている。そんな中、北朝鮮の特殊部隊9名が福岡ドームを武力占拠、後続部隊とともに福岡を制圧し地方自治体首長に日本からの独立を宣言させる、日本政府は何もできないまま九州を封鎖する。過去に凶悪な犯罪を犯し今なお社会に適応できずに特殊なコミュニティに身を寄せる変質的な少年たちだけが、彼らに闘いを挑む。
規格をはずれた少年たちを救うものはいったい何か?
北朝鮮の兵士はこの国で何を感じるのか?
こんな話を書く作家も作家なら、出版する出版社も出版社である。
凄すぎて誰も真似できない。
そういえば、村上春樹の文体の物真似は腐るほどあるが、村上龍の文章のリズムと密度は誰にもコピーできない。
海外での生活、阪神大震災、地下鉄サリン事件、を経て必死に日本社会へのコミットを始めた村上春樹の姿勢には胸を打たれるが、村上龍の作品はつねにこのいささか特殊な社会へのコミットメントそのものであったように思う。
「破壊と暴力」をモチーフとするが、その先にはいつもポジティブな何かが感じられる点が、ぼくは好きです。
この作家のメッセージは常に非常にシンプルである。
当たり前のことしか言わない。しかし、当たり前のことが書いてある小説は、意外に少ない。
そして、当たり前のことを力強く主張する小説は、当たり前だがとても強い。
それ故、そのメッセージは時折驚くほどぼくを傷つけるのです。
もうひとつの「13歳のハローワーク」と言ってもいい作品だ、と ぼくは思う。
教師や施設の職員やその他の大人たちはヒノに、人の命は何よりも尊いのだとクソのような言いぐさを呪文のように繰り返すだけだった。イラクやアフガニスタンやシリアの内乱では毎日大勢の人が死んでいて、スーダンやエチオピアの紛争では数十万の子供が餓死したそうだ。だが教師や施設の職員やその他の大人たちにとって、そういった現実は命の尊さとは無関係らしい。そういった腐った大人たちから正しく生きろと言われても子どもは何のことかわからない。もちろん素直に従う子どももいる。だがそいつらは大人が正しいのだと自分で判断して従うわけではない。大人に従えば利益があって、従うのを拒否すると罰が与えられるのを知っていて、それから逃れているだけだ。大事なのは、今のヒノやタケグチみたいに、やらなければならない何かを見つけることだ。何もすることがなければ、腐ったものを見続け、腐った大人たちの言うことを聞き続けることになり、そしていつの日か大人に従い指示通りに生きたところで何の興奮もなく、楽しくもなかったということに気づき、ネットで仲間を募集して自殺するか、ホームレスになるか、あるいはあきらめて大人の奴隷になってこき使われて、それで一生を終わることになる。
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Tak's Bar@Blog : 2005年4月9日 06:14
北朝鮮のコマンド9人が開幕戦の福岡ドームを武力占拠し、2時間後、複葉輸送機で484人の特殊部隊が来襲、市中心部を制圧した。...
booksjp : 2005年5月4日 17:38
ようやく読み始めました。『半島を出よ』■内容■北朝鮮のコマンド9人が開幕戦の福岡ドームを武力占拠し、2時間後、複葉輸送機で484人の特殊部隊が来襲、市中心部を制圧した。彼らは北朝鮮の「反乱軍」を名乗った・..
掟の門 : 2005年5月5日 14:53
半島を出よ(上)2005年05月06日楽天 本・雑誌・コミック デイリーランキング第1位著者: 村上龍 出版社:幻冬舎ISBN:434400759Xサイズ:単行本 / 430p 発行年月: 2005年 03月 本体価格:1,800円 (税込・..
楽天売れ筋ランキング集 : 2005年5月6日 14:42
北朝鮮のコマンド9人が開幕戦の分ドームを武力占拠し、2時間後、複葉輸送機で484人の特殊部隊が来襲、市中心部を制圧した。彼らは北朝鮮の「反乱軍」を名乗った。 五分後の世界に続く村上龍の近未来戦争もの? 1・..
Pandora's box : 2005年5月8日 23:21
村上龍さんの「半島を出よ」上下二巻完読しました。読後の感想は心地よいですよ。お勧めします。で、正直に白状しますと、あっしは村上龍が書いた本って、実は初めて読みました。バブルの頃のパブリシティイメージで...
Birth of Blues : 2005年5月18日 13:54
とにかく疑問なのは村上龍が世界をきちんと認識しているのかということ。テロが起こるためには経済危機的な状況が必要ではあるのだけれどあまりにも現実離れしている感が否めない。ただのエンターテイメントなら...
a fruit knife and a boy : 2005年11月28日 03:09
今、村上龍の 半島を出よ (上) 著者:村上 龍販売元:幻冬舎Amazon.co
日本脱出への道 : 2006年1月10日 18:35
コメント
TBありがとうございます。
恥ずかしながら、多忙のため、まだ読み終えていません。
のんびり読みます…。
投稿者 nautica crew : 2005年4月10日 22:28
nautica crewさん、コメントありがとうございます。
そうですかぁ、あれ相当長い小説ですからね。
登場人物多いから、時間あくと名前がこんがらがっちゃいそうですね。
投稿者 かえる : 2005年4月11日 08:17
確かにこれはおもしろい。
文体のリズム感も小気味よく引き込まれていくのですが、
登場人物の多さに頭を整理するのが大変です。
これほど読むのに時間がかかるとは思いませんでした。
それと、主人公の不在により、感情移入ができないのがつらいかな。
投稿者 とやまん : 2005年4月25日 14:02
とまやんさん、コメントありがとうございました。
確かに登場人物が多いから、特定の人物に感情移入するのは難しいですよね。
北朝鮮の兵士たちなんて、ほとんど誰が誰やらわからないままに読み進めてしまいましたよ。
投稿者 かえる : 2005年4月25日 23:48
TB ありがとうございます。
投稿者 booksjp : 2005年5月6日 20:26
15年来の龍氏のファンです。
弱い人に救いを提示しないとう欠点が
彼にはありますが、それを
補ってあまりある才能と勇気と感性は
現代日本の宝です。
最後のイシハラの台詞に感動しました。
サイコー!!!!!!!!!!!
投稿者 京都のサラリーマン : 2005年7月3日 22:36
京都のサラリーマンさん、コメントありがとうございました。
そうですよね、本当に勇気のある作家だと思います。
また、これだけの長い期間トップを走ってきていながら、常に高いテンションをキープしているのには驚くばかりです。
サイコーっす。
投稿者 かえる : 2005年7月4日 00:52
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