2006年2月21日
犬と旅に出よう --- 「だから愛犬しゃもんと旅に出る」 塩田佐知子
犬と旅をする、と聞いてまず思い浮かぶのは野田知佑さんと愛犬ガクのことである。
すごく知的でありながら野性味溢れるそのエッセイは、昔から大好きだった。
モーフィーを飼い始めて、ぼくもこれからコイツと色々な場所に行けるんだなあ、とワクワクしたものである。
もっとも、野田さんとガクの旅行先はアラスカだったりするから、参考になるとかそういうレベルではない。
しかし、愛犬と旅行したりキャンプしたりすることをテーマとした本は、探すと意外にも少ない。
執筆当時漫画家やくみつるさんのアシスタントだったという塩田佐知子さんの「だから愛犬しゃもんと旅に出る」は、その意味で貴重な一冊である。
残念ながら現在では絶版となってしまったようで、古本を探すしか方法はないのだが、先日やっと入手することが出来た。
笑えて泣ける、ホントにホントにホントに素敵な本だった。ちょっと、惚れてしまいました。
犬連れ旅行/犬連れキャンプのハウツー本、一応それらの体裁をとってはいるのだが、肝心のハウツーの部分は「まねしないでね」とか書いてある........
そもそも、やっていることがワイルド、というかメチャクチャなのである。
今まで愛犬のしゃもんにかかった出費を計算してみたら、フェラーリ・テスタロッサが買えることが判明............
ハスキーの生態に合わせて、気温マイナス10℃真冬のペンションでもヒーターはつけず窓は開け放す..............
旅行先のペンションにしゃもんを忘れたまま帰路につく........
河原で遊ばしていたら、しゃもんの肉球がまっぷたつに裂け全身麻酔で20針縫ったもののどうしても塞がらない部分が残り、連続での全身麻酔は避けたいからと、無麻酔での縫合を獣医に強要..............
山でしゃもんを離したところシカを追って行方不明になり、呼び戻すために自分のオシッコを周囲にまく........
成犬になったしゃもんが自分の力を誇示するようになると、犬が登れない鎖場に連れて行きしゃもんに一人では登れないことを自覚させた後おんぶひもで背中にくくりつけそこを登ってみせる(!!!)(ちなみにこれは偶然目撃した人が「ハスキーを背負ってロッククライミングをしている女性がいた!!」と雑誌「BE-PAL」に投稿し、後日「接近遭遇!驚愕のアウトドア奇人変人集!!」というコーナーに掲載された.....)、しゃもんが渡れない急流に架けられた丸太橋を同様におんぶひもで背中にくくりつけて渡る(!!!)......
厳冬期、吹雪の八ヶ岳に雨具と長靴で登山し、危険を感じたしゃもんが勝手に下山を始めたことにより命拾い...........
雪山にキャンプに出かけた際、大好きな酒を忘れたという理由で、車から降りたがるしゃもんを無視して酒屋を探し半日走り回る............
山中でのキャンプ中に暴風雨にあい、急遽撤収し雨具も含めすべての荷物を車に積み終わった後、鍵を車内に残したままロックしてしまい、気温3℃ずぶぬれの状態で木の下でしゃもんと抱き合って夜を明かす.........
まったくよくぞご無事で、という感じである。
そう、この本は、ハウツー本なんかじゃないのである。
イケイケOLだった著者が、アラスカで犬橇を経験したことからシベリアン・ハスキーを飼い始め、愛犬と多くの時間を過ごすためにOLを辞めイラストと雑文書きの仕事を始める。自然の中で見せる愛犬の笑顔のために、共に旅行し、山に登り、やがてキャンプを始め、その中で色々なことを考え悩み学び、愛犬の体力の衰えと共に旅のスタイルも徐々に変え、やがて年老いた愛犬の姿にしゃもんのいない世界を思うようになる.......
「犬との旅」を通して、ひとりの女性と愛犬の成長の歴史を綴った素敵なエッセイ&コミック本なのです。
オススメの宿を聞かれ、二人の知人にまったく同じペンションを紹介した時のエピソードというのが出てくる。
後日、Aさんからは「サイコーだった、クレームのつけようがない」、Bさんからは「すごく感じが悪かった、二度と行きたくない」という感想を聞いたそうだ。
おもしろいことに二人はまったく同じ体験をペンションでしていた。
それは、食事中にずっと吠えていた犬の飼い主に対して、オーナーが「もう少ししつけをしてからいらしてください」と注意したということである。
これに対して、Aさんは「ハッキリ言ってくれるオーナーは信用できる」と感じ、Bさんは「みんな犬連れで気にならないのに、言い方もキツイし白けた」と感じたのである。
どちらが正しいとかそういうことではない、同じ出来事に対しても様々な感じ方があるということなのである。
だから、この本もきっと、ちっとも参考にならないし犬がかわいそうと感じる人もいるだろうし、思わずジーンときちゃう人もいるだろう。
ともかく、少なくてもぼくにはヤラれるフレーズが満載なのだ。
「ある初秋の日、しゃもんとキャンプしてた河原で水遊びをしていると、それを見ていた地元のオヤジが、
「あんた、きったねぇー足してんなー」と、いうではないか。
すでに足に関しては開き直っていた私は、ケッ、と無視していると、
「でも、あんたのそのきったねー足見てると、その犬がどんなに幸せかわかるよ」と笑いながらいわれた。
このオヤジのひとことは、いまだに私の宝物である。」
「人と犬は楽しむ人生の内容が違う。そして、歩むべき道も違う。
犬は擬人化されず、犬本来の"犬生"を幸せに生きるべきだ。
そう思いながらお互いの幸せのためと、山ほどあった問題や障害に真正面から立ち向かってきた。
それで本当にしゃもんは幸せだったか? なんてわからない。
それは、しゃもん自身にしかわからない。
ひとつ確かなのは、"私がとても幸せだった"ということだけだ。
---それで、いいのだと思う。」
「これからどんな旅になるのかなんてわかんない
未来はわかんないからおもしろい
でも
しゃもんと一緒にいけるなら
どんな旅でも楽しいさ!!」
残念ながら、もうガクもしゃもんもこの世にはいない。
モーフィーとは、あと何年旅行を楽しめるのだろうか?
ペンションでも、貸別荘でも、キャンプでもいいから、今すぐモーと旅立ちたくなっちゃったな。
「だから愛犬しゃもんと旅に出る」 塩田佐知子
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コメント
こんばんわ、ご無沙汰デス。
私この本もってます。ローリーを飼いはじめてまもない頃もう10年も前に買ってすんご〜〜〜くおもしろくてカンドーして、よっしゃ〜犬って楽しい!私も楽しむぞ!!なんておもったものです。さいごがまたちょっと切ないですけどね。つい先日も、犬ゾリのこと考えながら、なにげにひっぱりだしてパラ〜りよみかえしたばかり。。なのでおもわずコメントいれちゃいました。
投稿者 ローミー母 : 2006年2月21日 22:03
ローミー母さん、コメントありがとうございます。
ぼくは当時を知らないけど、しゃもんはけっこう有名なモデル犬で、作者の塩田さんも犬連れ旅を広めたライターとして有名だったんですよね。
ローミー母さんも、まだ犬宿が少ない頃から犬連れ旅行を開拓、楽しまれてきた犬旅道の大先輩、色々教えてくださいね。
この本はずっと探していて、つい先日入手し、期待以上に楽しくカンドーさせられた一冊となりました。
犬と暮らし始め、旅行やキャンプ、行動を共にしていくうちに、塩田さんが色々なことにちょっとずつ気付いていくあたり、すんごく感動しました。犬から学んでいく、ってみんな同じなんだなあ、と思ったりして。
しゃもんが若くて元気なうちはハチャメチャなことやってたけど(ハスキー背負って岩山に登るオンナって、マンガでもそんなシーンないですよね)、年老いて体力が落ちてきたら、しゃもんは車で昼寝塩田さんは美術館やカフェ巡り、なんて旅のスタイルを変化させていく辺りもすごく素敵だなあ、と思います。
それにしても犬ゾリのこと考えながら、っていったい.....
もしや、ブカボスさんと犬ゾリチームでも結成されるのかしら?!
投稿者 かえる : 2006年2月22日 00:34
犬旅道の大先輩なんてーー(滝汗)ただただ子離れならぬ犬離れできずに連れて歩いているだけでお恥ずかしいかぎり。。
で、犬ゾリは、たまたま犬ぞりシーン(写真)を見る機会があったからというだけ。(余談ですが)先日ごく短時間ですがゲレンデでミルミルと一緒にスキー滑降し、スピード感を犬と共有する楽しさって犬ゾリのソレと一緒かな?とちょっとだけわかった気がしたんですよ〜
ブカボスさんも体験してきたようですネ。
いづれにせよ、犬の一生はやはり短いです。
うんとアクティブに楽しめる期間はあっという間にすぎ、意外とのんびりまったりを余儀なくされる後半生が長いものなんですよね。。
かえるさん家ももーちゃんの成長にあわせてたくさん楽しんでくださいね。
↓スノーシュートレッキング素晴らしいかったみたいですね!とてもうらやましく拝見しました。
投稿者 ローミー母 : 2006年2月22日 13:31
ローミー母さん
犬連れスキーレポート、見ましたよ。
ストックなしで、リードでミルミルちゃんに引っ張ってもらうって、ソレほとんど犬ゾリ状態じゃないすか!
それにしても、ゲレンデで大きなゴールデンリトリバーが駆け下りてきたのだから、みんなビックリしたでしょうね。すごく素敵な情景ですね。もう常連で、さぞや居心地のいいであろうペンションも各地にあって、羨ましいッス。
我が家は、昨年冬にブカボスさんと白馬でスノーシューデビューしようか、という計画もあったんですよ。予定が合わなかったり色々な事情で、実現しませんでしたが........
もちろん「ブカとボスの北海道犬橇の旅」もチェックしてましたよ。移住の日も近いのか?!
犬の一生はホントに短いですねえ、ウチですらついこの前までパピーだったのにもう体力のピークの時期に差し掛かっているし、あと数年もすれば飼い主達の年齢を追い越してしまうわけですからね。今はアクティブに、たっぷり楽しみたいと思っています。
ゴールデンはけっこう若くして病気になっちゃうコも多いと聞きますが、ミルミルちゃん9歳ローリーちゃん12歳で、揃ってまだまだ元気一杯でしょ、よほどストレスのない素晴らしい犬生を送られてきたんだろうなあ、と感動しますよ。
やっぱり、犬育て道でも尊敬すべき大先輩ッス。
ビブリオープン待ち遠しいですね。考えてみれば、ぼくはまだちゃんとご挨拶もしたことないんですよね。
今年は、どうぞよろしく。
投稿者 かえる : 2006年2月22日 21:53