2006年6月24日
M:i:III
ドイツでのミッション・インポッシブルは、残念ながらやはりimpossible dreamであった。
現実はキビシイのだ。
そこで、impossibleなmissionを成功させるためには何が必要なのか?、日本人の一人として学ぶ必要性を感じて(ウソ)、先行上映が始まった「M:i:III」をさっそく観に行った。
感想=素晴らしい!!!
トム・クルーズはもちろん、脇役、敵役、すべてがパーフェクト。
全米公開時の評判は芳しくない、と聞いたので心配していたのだが、個人的にはまったくの杞憂に終わった。
イーサン・ハントのゴール決定力......じゃなかった活躍は、決して期待を裏切らないのだ。
「よくよく考えてみるとソレって変じゃないか?」という箇所もあるのだが、圧倒的なスピード感で映画が進んでいくので、観ている時はまったく気にならない。やっぱり、アクション映画はこうでなくちゃ。
ああ面白かった。
監督は、テレビシリーズで名をなしたJ.J.エイブラムスという人物だという。
日本と同様に、近年はハリウッドでもテレビ出身のスタッフが面白い作品を作る傾向があるのだろうか。
生粋の映画人は、マンネリ化した映画作法の裏をかく斬新な作風にチャレンジしがちだが、テレビ出身の人々は(異なる表現の場として憧れてきた)映画が本来持つ魅力をオーソドックスな手法で素直にフィルムに焼き付けるから、なのかなあ.....?!
それにしても、最近はその言動や親バカぶりで話題になることが多いトム・クルーズだが、すごく頭のいい人なんだろうなあ、といつも感心させられる。キャリアの築き方が計画的だし、映画に対する愛情や情熱、そして一流スターとしての誇りと責任感を強く感じます。
ハンサムな二枚目スターが期待を裏切らずにキャリアを重ねていくことは、とても難しいし、なにより勇気が必要だと思う。普通は「自分はアイドルじゃなくて演技も出来るちゃんとした俳優なんだ」とばかりに汚れ役を望み(例えばブラッド・ピットみたいに)、やがてその多くは輝きを失っていくものだから。
明るく正義感に溢れたAll-Americanなスターとしてのイメージを守りつつ、同時に映画界に多大な貢献を続ける俳優としてロバート・レッドフォードがいる。
トム・クルーズには、彼のようでいて欲しいな。
しかし、レッドフォードの時代と今では、そもそも大衆がスターに求めるものが変化している。その道は険しいだろうが、ソレが出来そうな映画スターは他にはあまり見あたらない。
映画界のエース・ストライカーとして、これからもがんばってね、トムさん。
ところで、トム・クルーズはかつて立派に侍になりきったが、SAMURAI BLUEはなぜイーサン・ハントになれなかったのだろう?
impossibleと思われるmissionを成功させるためには、いったい何が必要なのだろう?
その答えは、この映画の中にもしっかり描かれていた(ウソ、でももしかして半分ホントかも)。
「M:i:III」では、イーサンの人格や、彼を中心とする仲間達のチームワークが、前作、前々作以上に効果的に描写されている。
「不可能な任務の成功」に映画的なリアリティを与えるために、様々な要素が映画的に提示される。
緻密な計算に基づく計画とその周到な準備、個性や特技を生かした適材適所な役割分担、友情と信頼とプロ意識を基盤とした強固なチームワーク。
それでも、作戦はたいがい計画通りにはいかない。
そりゃそうだ、じゃなきゃ面白くもなんともない。
そしてもちろん、そんな状況を打開するのは、個人の機転や勇気や行動力、ひとことで言えば挑戦する姿勢である。
無謀な跳躍や、危険な決断や、限界を超えた疾走、の先に奇蹟は起こるのだ。
しかし、(そもそも当たり前の話だが)誰もイーサンに対して「自分の判断で自由にやれ」なんて言ってくれてはいない。
国の思惑、組織の都合、個人の信念。そういったアレコレにがんじがらめにされた中で、イーサンはやむにやまれず、大きなリスクを自ら背負い、周囲に反対され時には敵にまわしながら、勝手に決断し勝手に行動するのだ。
そうやって彼は、最終的には、恋人を救ったり、地球(というかアメリカ)を救ったり、自らの夢を叶えたりするのである。
そして、ぼくらは拍手を送り、ハッピーな気分になって映画館を後にする。
では、イーサンがリスクを背負ってでも個人の自由な発想で、勇気ある(そして非常識な)行動を起こすのは(あるいは、起こせるのは)なぜだろう?
もちろん、そうじゃなきゃ映画にならないからなのだが、「それってけっこうマズイんじゃないの?」ってくらいムチャクチャやって帰ってきたわりには元の職場で奥さんと一緒に結婚を祝福されているというハリウッド・エンディングなラストシーンを観ながらぼくが思ったことは........
最終的に成功をおさめた者には、とりあえず無条件の賞賛と拍手を与える社会。
皆が目をそらしたいと思っている戦争が行われている国で懸命にボランティアをしていて誘拐され目立ちゃった人、多くの国民が支持している首相が目指すと公約した社会のお手本的な経済活動の結果たくさん儲かり過ぎて目立ちゃった人、それらの人々が巧みに理由づけられ猛烈にバッシングされる社会。
たぶん後者の社会を持つ国から、取り返しがつかないほど大きなリスクを背負ってでもシュートを打とう........じゃなかった行動を起こそうと考える個人は、まあなかなか出てこないだろうなぁ〜、ということ。
だってソレって、たんなるおバカさんか、数十年に一人の天才か、救いようのないロマンチスト、ってことでしょ。
おっと、例によって本題より蛇足の方が長くなってしまった..............
まあともかく、個人的にはかなり楽しめた映画、ということですわ。
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コメント
そうですか。MI3は良かったですか。今回は3作の中で1番良いとの話なので、ちょっと期待してます。(MI2の桃太郎侍的、かつ仮面ライダー的演出に怒りまくってました…)
ところで日本代表に足りなかったもの…。やっぱ、「愛」ですね〜。そしてそれは、生まれた時から満たされている(と言って良いでしょう)日本の若い世代(僕らも含めて)の姿そのものの様な気がしました。なんて、話し始めるとまた長くなりそうなので、ここで自主規制(笑)。
まぁとにかく、オシムには徹底的に鍛えて欲しいです!(僕が鍛えられるわけではないので、ヒトゴト(笑))
投稿者 wanrei : 2006年6月25日 20:06
はい、個人的にはとても良かったです。
もっとも、MI2の中国4000年の歴史的なテイストも、アレはアレでぼくは嫌いでもないのですが。
そうですか、「愛」ですか〜、やっぱり。
ってことは、次期監督は原さんで決まり!.....なワケないか。。。
ところで、オシムって、ほぼ決定なの?!
今こそ岡ちゃんだろ、って思ってるのは、もしかしてオレだけ.....?
海外での強化試合ブッキング用に誰か有名外国人あたりをスタッフに加えて、っていうのじゃダメ?
いずれにしろ、ぼくはスポーツファンとしてW杯を楽しんでいるのではなく、国民的行事として毎回日本代表チームをウォッチングしているので、日本が負けちゃった時点で終わったも同然なんです。
ああ、つまんないの〜。
まぁココではアレでしょうから、wanreiさんにはご自身のブログで、日本代表について自主規制なしでアレコレ語って欲しいなあ。
ヨロシク!
投稿者 かえる : 2006年6月25日 23:44
日本代表終わってみればレベルの格差にしょうがないかなあなんて思ってしまいます
果たして次回は予選すら突破できるのでしょうかね〜アジア枠も減っちゃうみたいだし
この映画はパパさんとも見に行きたいねって言ってたんですよ
かえるさんお勧めですか
私は昔見ていたスパイ大作戦のイメージが強くて、なんかトムクルーズがすっごくかっこよすぎて
でもあのはらはらドキドキがなんともいえないんですよね〜まるく収まるのは分かっていても
もし私が見てきて感想書くにしてもきっと面白かったです、で終わっちゃうんだろうなあ
さすがかえるさん話は映画だけでは終わりませんね
投稿者 michiyo : 2006年6月26日 22:51
michiyoさん
次回、予選突破はかな〜り大変でしょうね〜。
でも、よくよく考えてみれば、予選を戦い抜いて本大会に出場できるようになったのは、ここ数回のことですからね。そもそも、本大会での予選リーグ突破は当然、といった雰囲気自体が我々の大いなる勘違いだったんでしょうね。
でも、情けない結果に終わった、みたいな評価はどうなんでしょうねえ?
個人的には、クロアチア戦はとてもいい試合だったと思うけどなあ。そもそも引き分け(とブラジルに負けること)は当初の想定通りだったでしょうし。
つくづく、オーストラリア戦での最初の失点、というよりもその後に見せたメンタルな部分のひ弱さが残念に思われます。
そういえば、トルシエが新聞の論評で「この4年間は私が作ったマシンに少々手を加えれば何とか走らせることが出来た。しかし、これからの4年間はそうはいかない。次期の日本代表監督は新しいマシンを作る必要があるのだ」みたいなことを書いていました。予選リーグ敗退がほぼ決定したタイミングだったので、まさに言いたい放題(要するにオレがもう一度作り直してやる、ってアピールがプンプンですから)なのですが、まったく事実に反するというわけでもないところがキビシイところです。
新監督がどのようにチームを作り直していくのか、興味深いですね。
それに、今後要所要所で耳にすることになるかもしれないオシム語録にも、興味をひかれるところです。
え〜と、そういえばここは、W杯のトピではなくMI3が主題でした......
アレコレ小難しい理屈をこねくり回しながら映画を観るような輩(オレのことか?)以外には、わりと安心してオススメできる作品だと思いますよ。
映画でも音楽でも、ぼくら素人が感想書いても、結局「おもしろかった」とかになっちゃうし、その理由を説明しようにも「言葉じゃ説明できないから観て下さい」になっちゃうじゃないですか。
だから、最近はふざけ半分にぜんぜん関係ない時事ネタと強引に抱き合わせにするのがマイブームです。
ユーミンとダ・ヴィンチ・コードとか、MI3とW杯とか。
読んでる人にはなんのこっちゃ?で、大迷惑でしょうけどね。
投稿者 かえる : 2006年6月27日 00:36