2006年9月10日

野営のブルース

「フライの雑誌」今季号特集は「野営のブルース」、要するに野営釣行の記事が満載で、なかなか興味深いものがあった。
バックパッキング、入渓地点をベースキャンプとした犬連れテント泊釣行、バイクツーリング、林道脇の野営、食料現地調達のワイルド系源流釣行、キャンプ場利用のオートキャンプ、ニュージーランドのモーターキャンプ(MC)システム、アメリカのイエローストーン国立公園のバックカントリー(オーバーユース制限が厳しく、特別なパーミッションが必要。馬か徒歩によるバックパッキング以外は許可されない)などにおけるキャンプグラウンド事情等々、様々なスタイルの釣りキャンプが紹介されている。

中でも、「はぁ、たしかになあ....」と思わず嘆息をもらしてしまうのが、フライフィッシャーの間ではちょっとした有名人である久野康弘さんの「ああ、憧れのバックパッキング」という記事。
簡単に言うと、今日の日本で格好良く「バックパッキング」することにはちょっと無理があるんだよなあ、といった内容。
そう、日本の釣り場環境、自然環境、社会環境、文化的背景、その他もろもろの事情から、憧れているソレを実現するのは非常に困難なのである。

例えば、一般に西洋毛針釣り愛好者が憧れるバックパッキングでの釣り旅というのは、なだらかな丘陵や牧草地を縫って流れる川のほとりをテントを背負って何日か釣り歩く、あるいは、何キロ四方にわたって人の姿が皆無なバックカントリーをガイドと共にサイトフィッシング、といったニュージーランドなどの釣りのイメージ。
もし日本において無人の渓で竿を出したければ、藪こぎ、ヘツリ、泳ぎでの遡行やザイルワークを駆使して源流域に向かうことになり、こういった沢登り的なアプローチは「ちょっと違うんだよなあ〜」といったことになる。おまけに、苦労してたどり着いた先には巨大な堰堤が出現したりして、幻滅するやら「こんなところにどうやって作ったんだ?!」と妙に感心するやらしたりして........
このへんの事情は、ぼくがよく使う「トレッキング」という言葉にも当てはまる。
そもそも本来のトレッキングが出来るような場所は国内にはほとんどないのだが、「せめて気分だけでも....」と景観に優れた山腹を平行移動するルートで歩いてみたりすると、スキー場の屋外スピーカーから大音量の歌謡曲が聞こえてきたりして雰囲気ぶちこわし...みたいな...........

もっとも、自然環境だけを見れば、きっと素晴らしい場所は国内にもたくさん存在するのだと思う。
現に、「Outdoor Japan」の成功に見られるように、日本の自然やそこで行うアウトドア・アクティビティの魅力は、徐々に外国人旅行者にも浸透し始めているようだ。
だけど実際問題として、数日の有給休暇を取るのが精一杯、その中で家族サービスもあれもこれもせにゃならん、という日本の普通のサラリーマン(自営業なんてもっと大変だろう)にとっては、日帰りや1泊2日のせわしない旅がせいぜい、文中でも触れられているように代償として何かを「捨て去る」ことなしには「自由気ままなバックパッキング」なんて成立しないのですよ。
大体こういうものは、若いうちに経験しておくものなのかしら。
そんなわけで、日本の中年男性が現実に行う野営は、悲しい哉やっぱり「ブルース」になってしまうのだなあ。

実はぼく自身は、バックパッキングでの釣り旅というものにはそれほどの憧れはないのだが、釣りの為のキャンプというのは何度か行ったことがある。林道脇はイヤなので、たいていはキャンプ場を利用してきた。
月山、朝日連邦を望む寒河江川上流の無料キャンプ場とブルーバックレインボー(釣れなかったけど....)で有名な野反湖キャンプ場での釣りキャンプは、とても印象に残っている。
寒河江川では、目の前のキャッチ&リリース区間ではなく、周辺の支流でいい釣りができた。
野反湖は、鮮やかなレンゲツツジの群生と、人造湖とは思えないまるでヨーロッパの山上湖のような景観が忘れられない。
どちらも、いつか再訪してみたいな。

ところで、この特集を読んでいたら、キャンプスタイルについての雑感、ここ数年の野外フェスブームが日本のアウトドア・シーンに与えた影響について、等々書いてみたくなってきたのだが、長くなりそうなのでそれはまた今度。

投稿者 かえる : 15:38 | つぶやき

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.blacklab-morphee.com/blog/tt_tb.cgi/1514

コメント

コメントしてください




保存しますか? はいいいえ